遥は生かしてくれた。

この不要物の僕を...

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生還1

 

「何してるんだよ!!!」

 

隣の席から怒鳴り声が聞こえた。

遥だ。

遥が泣きながら怒鳴っている。

 

だが

一度決めた以上、死ぬしかない。

 

「うっせぇんだよ!人が死ぬのも、死なないのも関係ねぇじゃねぇか!」

 

「てめぇーは何言ってるんだよ。お前はアホか!やめろ!!」

 

遥は、うちの腕を掴み

ナイフを振り落とした。

 

やっと我にかえった。

自分のしていた事の、卑怯さ...

自分は「自殺」しようとしていた事に気づいた。

生きたくても生きれない人間がいるのに...

 

「死んだら、何もかも終わりなんだよ。

  お前の事もっと知りたいのに

  死ぬなんてずるいっ!!!

  辛くなったら、うちが助けるから。

  だから生きようよ。お願いだから...」

 

「生きようよ」

 

この言葉が胸へ響く。

今まで生きていた12年間、一度も言われたことが無かった。

 

自分はゴミ以下の存在。

 

そう思っていた。

だけど今、

遥は確かに

「生きようよ」と、自分の存在を認めてくれた。

空耳なんかじゃない。

うちの胸へ響いて、こだましている。

 

「ありがと...」

 

涙は次から次へと溢れてきて

上手く喋れない。

今までの

「悔し涙」「苛立ちの涙」

とは違う。

純粋な「嬉し涙」だ。

 

「生きている喜び」

「初めて認められた喜び」

 

色々な想いが混じっている。

綺麗で純粋な涙が

初めて流れ落ちた...

 

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